作新アカデミア・ラボ
34/46

32理事長:お陰様で、以前からお話ししていた「アカデミア・ラボ」がようやく竣工しました。山中:アクティブ・ラーニング中心の教育機関で、オープンラボ なんだそうですね。理事長:はい。以前、米国 MIT(マサチューセッツ工科大学)の 「メディア・ラボ」を視察した際、全面ガラス張りで高い壁に遮蔽され ない空間が、こんなにも創造力や発想力を自由に羽ばたかせて くれるのかと衝撃を受けました。ですから、アカデミア・ラボには固定壁がほとんどありません。机や椅子もキャスターを付け、用途に応じて瞬時にフォーメーションを変えられるようにしています。山中:日本の教育はハードスキルと言いますか、知識を習得し 受験やテストでいい点を取るという教育が中心。それも重要ですが、実際に世の中を生きていくためには、「ソフトスキル」が重要です。ソフトスキルとは、コミュニケーション力やチーム力、忍耐力、そして自分たちで考える力。自分たちで大きな課題をいくつかに分け、それぞれで分担して解決していくといったスキルがないと、社会ではうまくいきません。理事長:作新で「人間力」と呼んでいる力が、まさしくそのソフトスキルにあたるのだと思います。ラボでは、教師が一方的に話し くにたち板書する授業は行いません。グループワークを基本としながら、 プレゼンテーションやディスカッションを生徒たち自身が重ね、課題を解決する力を養います。山中:そういう授業は、ソフトスキルを生徒さんたちに植え付ける意味で、本当に素晴らしい取り組みと思います。理事長:ありがとうございます。先生は、ノーベル賞受賞後もiPS細胞の研究からその実用化まで、常に世界のトップを走り続けて らっしゃいますが、そのきわめて高いソフトスキルは、どこで養われたのでしょうか。山中:いや、畑先生こそソフトスキルの塊だと思うんですが。ただ、僕にとって中学・高校での教育が、すごく役立ったというか、そこで身についたんだと思います。理事長:大阪教育大学付属の中高一貫校で学ばれたんですよね。山中:教育方針が、いい意味でほったらかしというか、ハードスキルも自分で勉強しなさいという感じで、行事とかクラブ活動がすごく盛んでした。先生から何も指図されず、自分たちで企画し、自分たちでやると。それで失敗は一杯するんですけど、まさに失敗 から学ぶという校風でした。理事長:先生と同い歳だからかもしれませんが、私の学んだ都立国立高校も完全な放任でした。制服も、校則も一切なく、髪を染めても化粧をしても、すべて生徒の自由。当時の都立高の中では受験偏差値が一番高かったはずなんですが、盛んなのはむしろ部活。「スーパーマンになれ」の教えのもと、失敗を繰り返して学んだ中高教育日本の教育は「ハードスキル」中心。でも実際に世の中を生き抜いていくには「ソフトスキル」こそが重要です。—山中伸弥氏

元のページ  ../index.html#34

このブックを見る